ワーホリ

ラブレター

同居中のカナダ人の思い出。

この農家に滞在し始めて間もない頃。とある休日、洗濯をしようとランドリーに行くと、彼女はランドリーの片付けをしていた。衝撃だった。私が考える私は働き者で、人より少し多めに働いてて、勤勉な日本人のはずだった。各国の若者たちの評判をあちこちから聞きかじっていた私は正直言って自分を高く、他人を低く見積もっていた。だけど目の前で、カナダから来てる年下の女の子が休みの日なのに働いている。しかもその動機が「ただホストのためにやりたいから」だと。これは、自分がかなりの働き者だという謎のプライドを持ちつつ、仕事だる〜と思いながらダラダラ働いていることをまじまじと観察させられる経験だった。その後も彼女は常に仕事を的確にテキパキとこなした。しかも同時に、どんどんとホストと仲良くなり、信頼関係を築いていた。英語を理解しない私にさえ理解できるほどに明らかだった。人間が出来ている。こうして私はそんなに働き者でもないし、仕事もトロいし、コミュニケーションにもはっきり言って難があるということがわかった。そんな私の動揺を知ることもなく、彼女は楽勝と言わんばかりにスイスイと進む。私にとって彼女は無理難題を楽々こなす超能力者だった。

彼女は18歳の頃から世界のあちこちを旅をしている。身なりはさほど気にしないがどこか品の良さを感じさせる振る舞いをする。でも呆れるほど奔放。エネルギッシュかつ老成している。親の仕事の都合で住んだヨーロッパで通っていた高校は辞めた。大学も通っていたが今は休学中で最早戻る気はない。彼女の心は自由だと感じる。彼女は彼女のルールに従って生きている。だけど誰もそれを知る由もない。ティーンエイジャーの頃から書き溜めている日記だけが彼女を知っている。18の頃から23の今日まで、彼女は一体何を考えて生きて来たのだろう。そういうことに興味を持たせる存在。

英語が話せない上に臆病者の私は、この農家に来てしばらくの間、彼女が毎朝言ってくれる「How are you?」にもうまく答えられなかった。不愛想な上に何もアクションを起こせず、自分の存在価値を相手に示すこともできない。それでも少しでも興味を持って欲しかったのでとある朝意を決し「Good morning, sweet maple syrup!」と呼びかけた。毎日毎日飽きもせず無口、話しかけても話を聞き取ることすら出来ないアジア人に突然謎の呼びかけをされた彼女は、立ち止まり数秒空を見上げて考えた後、大きな口を開けて笑った。私の隣に座っていた他の同居人も笑っていた。どうやらうまくいったらしい。恥ずかしさで顔が熱くなるのを感じた。嬉しい経験だった。その日からしばらくはその場にいた人たちは彼女をsweet maple syrupと呼んだ。

そんなスウィートメープルシロップはこれまで私にとって大きな窓になってくれた。そこから他の国の文化を眺めることができる偉大な窓。自分がどれだけ元いたコミュニティに影響されているかを再認識させてくれる。いつも通りの思考に疑問を持つことを促してくれる。数ヶ月共に暮らすことが出来たのは本当に幸運だったと思う。ついに彼女は明後日このファームを去る。今日一緒に見つづけていたStar Warsを最後まで見きった。初めの頃は一緒に映画を見れるなんて想像だにしなかったな。嬉しいな。もちろん彼女はみんなにめちゃくちゃナイスで、クソな私は独占欲などにより時々それにヘコむんだけど、まあ少なくともナイスのその要素は私の中に取り入れられるようにしたい。

ラブレター書いてる気分だ!ははは。

目新しい発見でもないですけど

実は今、前と同じガーリック農家に来ている。というか来てすでに1ヶ月半経過した。前回よりも英語が分かるので話についていくことができて楽しい。世界の解像度が上がった。一緒に働く人たちの性格も、以前考えていたのとは違っていたりして良くも悪くも新たな発見が沢山ある。今回はとある一人のカナダ人と一対一で話す機会が多い。長期間共に生活することでお互いに力が抜けた自然な状態で、手厚く扱ってもらったり、無下に扱われたりするのはなかなか面白いなと改めて思う。その人の行動によって生じる私の感情は、一定の視点からその人を見ることを許さない。何かしら新しい感情に出会うたびに、その人のことを少し違う人間として扱うようになる。

こいつ嫌な奴だな!と思ってもすぐに諦めない方がいいな〜と思った。面白いから。

連続

田舎に引っ越した。12人くらいでシェアハウスに住んでいる。家は設備も整っていて、機能面は人生で一番の家と言っても過言ではない。近くのスーパーに行って少し良い食品を買う。これまでの旅行で出会った人に教えてもらった美味しいものを選ぶ。これは日本だと、好きな時にトンカツを食べられるよりももう少し裕福な暮らし。シャワールームが広い。インターネットが速い。私はwifiが好きだ。wifiがないと喉の渇きを感じる。wifiさえあればテント暮らしでも良い。だから今は嬉しい。最近クリーナーの仕事を手に入れた。ボスはワニ皮のベルトをしたファンキーな60代後半の女性だ。職場まで遠いから自転車を貸してくれた。光がよく反射するベストも準備してくれた。どうもありがとう。先週アボリジニの子どもに梨のかけらを投げられた。嫌だったけど、これくらいの嫌なら問題ない。心がざわつくこともままあるが、その何もかもがアトラクション気分というか、どこか「まあいいか」と思う。この街で起きる事のほとんどが、期間限定の付き合いだからダメージも少ない。私は現実逃避が好きだ。だから旅行が好きだ。新鮮さは素敵な刺激だ。ポケモンの緑バージョンも「はじめからはじめる」ことに楽しさを感じた。そんなことを思い出す。それでいいのかとかそういうことは今は少し置いておきたいが、逃避だということを、期間限定だということを気楽に思う自分は面白くないなと思う。

時間な〜い

実はもうガーリック農家は出ていて、バックパッカーホステルでうだうだするなどしている。前にいたシティのホステルは日本人が沢山いたのだけど、今のホステルには全くいない。むしろアジア人が少ない。やはり人種は固まりがちだと思う。合理的だけどどことなくつまらなくも感じる。つまらないと感じるのは、それが日常だからであり、オーストラリアに来て8ヶ月ほど経つ今でも日本人と暮らすのは相変わらず日常なのだということに少しがっかりしてしまう。打開できていないのだ。未だに話しかけてすぐに仲良くなれるのは日本にすごく興味がある人か男性かの二択。そして日本に興味がある人は総じてアニメ好きなので会話といってもその程度。エヴァンゲリオンはアスカ派です。私の人間性は?あなたの人間性は?英語の問題もある。英語の問題じゃない部分もある。そもそも日本語で話したところで、私の裸の人間性をさらけ出せるような心の強さも素直さもないのだし。自分の将来のこと、濁していること、自分の核について話している時、涙が出てきてしまう。腹をくくれ、腹をくくれ。

旅行は

旅行は若い時にした方がいい。今滞在している農家で出会う旅人たちは成熟して、自分一人で立っているように見える。自分が何を求めているかはっきりしていて、それを態度に示す。余裕があるときは他人の手助けもする。必要な仕事であれば嫌がったりしない。お酒、音楽、映画、読書を楽しむ。新しいことを学ぶことの良さも、のんびりリラックスすることの良さも知っている。他人に自分の考えを明確に述べることができる。何に楽しみを感じるかわかっているということは、当たり前だけど大切だと思う。それは自分の行動の指針になるから。旅行を若い時にすると、自分で主体的に行動しなければいけないからその能力が伸びる。感受性が豊かな時に様々な行動指針を持った人に出会える。結局人間は、別の人間と会うことで磨かれる部分が多いと思う。

私は自分が何を好むのか、霞がかかったようにぼんやりとしか理解していなかった。新しいことに出会うのが好き、多分。旅行が好き、多分。友達と過ごすのが好き、多分。でも今、いくつかはっきりと好きだと断言できることがある。綺麗な夕焼けを見た時にお互いに教えあって、日の入りまでの十数分一緒に見るのが好き。美味しいごはんが好き。TVはない方が好き。食卓を囲みながら会話をするのが好き。好きな音楽を聞きながら友達と車で移動するのが好き。川で泳ぐのが好き。裸になって泳ぐのもなかなか楽しい。ハッキーサックをするのが好き。一生懸命働いて疲れた後、友達とビールを飲むのが好き。沢山のブランケットに包まれながら友達と一緒に映画を見るのが好き。そのとき隣から感じる体温がとても好き。今まで集団から外れて、一人で行動するのが好きだと思っていたがどうもそうとは言い切れないらしい。

最近毎日が楽しい。嬉しくて泣きそうになる。

半年くらいたった

今考えていることは残り半年のプランと帰国後のこと。私はプランを考えるのが嫌い。あらかじめ何かをするということをしない。美容室や歯医者は1日前に予約を入れる。なぜかというと、めんどくさいから。そしてプランを決めると急に発生したイベントに乗れない可能性が高く、がっかりしてしまうから。今現在も、3月上旬にファームを出る予定にしているものの、次のプランは考えていない。モヤモヤ〜っとした霞のような案はあるのだが、具体案は見えない。

最近気づいたけど、このやり方はなんとなく日々が過ぎていく。なんとな〜く苦しくて、なんとな〜く楽しくて、ラララ〜、おしまい、死。

自分が何も積み重ねてなくてなんとなく苦しい状態ってこのままだと一生続くと思う。外の世界に働きかけない限り何も自分に跳ね返ってこない。何も跳ね返ってこないのなら調整もできない。

だからね、プランを考えます。ギッチリすし詰めにしてやる。クソが。

心がけたい日記

まだ同じファームに滞在している。ガーリック農家。

WWOOFerも増えて、現在7人。日本人は働き者だという話をよく聞くけど、私が1番怠け者だと思う。皆よく働く。つら。皆料理上手。つら。女性陣で一番年上は私なのに他の人の方が成熟して見える。つら。

つら、と思うのも他人の目を気にして比較した上での感想。つら!!!

物事を判断する時って何個か順序や選択肢があって「どうもこれが一番いいらしい」っていうのを選んで行動に移すと思うんだけど、社会人になって以降それが選びにくい。もしオーナーが他の工程を挟みたかったらどうしようとか、今日はいつもと違うことをしたかったらどうしようとか、そういうことを考える。念のための確認を取らないと怖くて行動できない。でも一緒にいる人たちは、自分が正しいと思ったことをとにかくやってしまえ方式。「野菜収穫時期じゃん!収穫しようぜ!これ以上日が経つと硬くなっちゃうぜ!」そして確認を取らず収穫。相手の様子を伺いすぎない。結果的に良くなることも悪くなることもあるが、この行動様式は今の私に必要だなと思う。

とある日の食事中、イタリア人の女の子がオレンジジュースをカナダ人の女の子に勧めていた。カナダは「いらないよ〜」って言ってたんだけど推しに負けて一口飲み、コップを返した。イタリアはそれを一口飲んでまたカナダにコップを返した。私的には「・・・なんで?!なんでまた返す??いらんっつっとるや〜〜〜ん!!!!」って心の中でツッコミ祭りだったんだけど、でもその後カナダがオレンジジュースのお代わりをもらいに行っているのを見て、感銘を受けた。これはイタリアの子の行動がカナダの子の期待を超えた瞬間だ。

今一番身近で嫌なのが料理をする時。いくつかアイデアが浮かんだとしてもそれを実行に移すのが怖い。相手がまずいと思ったらどうしよう、微妙な雰囲気の流れる食卓になったらどうしよう。だから他人に料理を振る舞うのを好まない。そしてアイデアも浮かばなくなっていく。

イデアが浮かばなくなってくるのが一番嫌だなと思う。守りの姿勢が過ぎる。自分がいいと思ったことをそのまま行動することを心がけたい。